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「質」と「量」をめぐって(パート1)

 さて、わたくしはMMTやマルクスあたりの考え方とか思想を現代の日本人にお伝えしようとしているわけですが、「質」(quality)という概念の説明ををしておく必要があると痛感することが多いです。

 ええ、「質」という日本語は皆さんお使いになっているわけで、それを「説明する」という偉そうなスタンスを取りたいわけではなくて、英語で言うところの quality 、ドイツ語の Qualität と日本語の「質」との違いを説明しておきたいわけです。

資本論の第一章「Ware und Geld(商品と貨幣)」を調べてみると Qualität という名詞形で29か所、qualitativ という形容詞形で21か所登場しています。だから大事なんですよー。

 これともう一つ「価値」という言葉にも似たような困った事情があると考えていまして「資本論をちゃんと読む」をちゃんと始める前にそのへんの話をしておこうというわけ。

 現代日本語の「質」は quality とはかなりズレていて、そのせいで、たとえばマルクス哲学の有名な言葉「量は質に転化する」の意味なんかがかなり分かりにくくなっている。

 Google検索で上位に出てくるサイトをざざっと眺めて頭が痛くなりました。

 

種明かし

 最初に種明かしをしておきます。

 quality は「質」よりも「種類」とか「多様さ」と翻訳した方がぴったりすることが多いです。

 たとえばよく「食事は質より量!」とか「いや量より質」とか言いますよね。これは体積や摂取カロリーという「量」を基準にするか、種類の多様さを基準にするかという感じで、この「質」は「種類」に近い。

 英語 Wikipedia を見てみましょう。七通りのページに分かれていることが分かります。

 現代日本語の「質」は、このうちの一番上の Quality (business) が一番近いように思います。

 対して英語やドイツ語の、特に哲学的な文脈ではしばしば Quality (philosophy)Logical quality の項目で説明されている意味が前面に出るんです。

 ご興味のある方はぜひ挑戦してみてください。

「質」をめぐる会話

「質」という言葉、英語の quality とだいぶズレてる

リッキー氏が言う柳と幽霊の区別ってのが quantitative(量的)な違いじゃなくて qualitative(質的)な区別が大事っていうことワンね。
政府債務の金利と銀行貸出の金利は違うだろ、みたいな。

ラテン語 qualis は「何」とか「どんなもの」。 リンゴでも帽子でもでなくミカンである。これが quality の違い。なんだけど「ミカンの品質」のように理解されちゃう。

qualisとquantum

qualityは質が良い悪いとかじゃなくて、種類の違いということですかね。

いわゆる原義は「何?」で、英語などの印欧語はその意味が強く残っているのだけど、現代日本語の「質」はあるカテゴリーの中での良い悪いになっている感じ

もともとは下の図みたいなものだったとして

商売人は次のような感じで考えたりしますよね

品質は、ある種の質なんですけれど、質のすべてではないわけ

なるほど

この項続きます…


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