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モズラー(MMT発明者)による資本論のような物価水準・インフレ論を精読する④MMTのミクロ的基礎(その1)

A Framework for the Analysis of the Price Level and Inflation という文章を頭から精読するシリーズの四回目。

きっかけ
Introduction 
I. The MMT Money Story 
II. The MMT Micro Foundation- The Currency as a Public Monopoly (ここ)
解説編: ”indifference” って何だろう が挟まる)
III. The Source of the Price Level 
IV. Agents of the State 
V. The Determination of the Price Level 
VI. Inflation Dynamics 
VII. Interest Rates and Wages 
VIII. The Hierarchy of Demand 
IX. Conclusion 

シリーズ② Introductionシリーズ③I. The MMT Money Story を読みました。
今回はこの部分。

II. The MMT Micro Foundation- The Currency as a Public Monopoly
II. MMTのミクロな基礎-公的独占としての通貨

この節は六つのパラグラフがあるので順を追って読みますがまずはタイトルから

章のタイトル

II. The MMT Micro Foundation- The Currency as a Public Monopoly

「公的モノポリーとしての通貨」ということですがモノポリーって聞いたことありますか?

ボードゲームのことなら聞いたことあります。

「市場の独占」という意味ですが、ゲームのモノポリーって大富豪が生まれるとおしまいになりますね。

経済学ではずっと昔から出てくる概念で、資本論にも出てきます。
語源的にはギリシャ語 monos(単一の)+poleo(売る)。
たくさんの買い手に対して売り手が一つという状態。

そんな意味だったのですね!

てっきりゲームのことだとばかり。

独占禁止法ってご存じですか?

名前は聞いたことあるのですが詳しくは分かりません

ある商品の売り手が一社しかないと、競争がないために値段を吊り上げることができてしまうので、健全な競争が必要だという思想があるわけです。

アメリカの石油会社の事例が有名ですが、少数の売り手によるカルテル(談合による価格設定)も同様にダメだということになっていますね。

国によっては法律の名称は様々だけれども「独占」= monopoly というわけです。

では独占の場合「価格」はどうなるかですが、それは量の反比例になるんです。

資本論にでてくる反比例ですね

牡蠣の価格の話

かるちゃんが世界の牡蠣の生産を独占しているとするとしましょう。
生産量が少なければ高い価格を設定できますが、生産量を増やすと価格は下がるということをイメージできますか?

牡蠣のむき身は今も女性たちが手作業でやっています。

非常に労力のかかる作業で、人件費も時間もかかる商品ですから生産はそれほどたくさんはできず価格を高く設定するのは自然ですね。

逆にもし機械化がすすみ、省力化、短時間で生産ができれば、もっと売るために価格を下げます。

モズラーはマルクスと真逆から考えているんです。

つまり、原価の高低とは全く無関係に、販売する量が少なければ高い価格を設定できますが、販売量を増やすと価格は下がる。
これはどうでしょうか? 

石油とかそんなイメージがあります

生産を絞って価格を吊り上げたり

なぜ牡蠣をたくさん売るようにすると同じ値段で売れなくなるのでしょうね?あるいは、なぜ価格は下がるのか。

飽きるから?かな…
毎日牡蠣フライだと飽きる!
たまに食べるから美味しい(^^)

牡蠣を食べないときはほかの何かを食べますよね。
たとえば同じくらいの食べたさがある他の食材があるから、それでいいじゃんということになるわけです。

そうですね

アワビとかホタテがライバルだからという感じですね。
消費者はそれらの中から一つを選ぶわけだけど「どちらでもいい」という商品があるわけです。
ミクロ経済学ではそれを「無差別 indifferentである」と言うでしょう。

なるほど

米などの主食と違ってこれじゃないとっていうものじゃあないですものね

いえコメでも同じになるでしょうね。

量が少なければ、パン(小麦)や芋や雑穀で済ます人が現れるはずです。そうならざるを得ません。

たしかに!

亡父は戦時中カボチャばかり食わされ、ずっとカボチャを嫌ってました。

そうですね。
ある商品Xの価格は、そのX以外のすべての商品とのバランスしている。

バランス、一種の「均衡」のような状態があるよね、ということなんです。
これって当たり前ですよね。

例えばいまガソリン価格が上がってますが、そういったコスト増をなかなか価格に転嫁出来ず困っている人がいるのは、もともとの価格均衡があるからですか?

うーん、そうした評価はたとえば消費者にとっては別に悪いことではなかったりするのでちょっと置いておいて、全体の価格のバランスに注目します。

ガソリン価格が動けば他の全商品の価格が少し動くことでしょう。それを均衡すると呼んでいるわけです。 

なるほど

円で考える価格表のイメージ

前回、こんな表を考えましたが。。。

モズラーは「その通貨で売られている全商品」というような考え方をするわけですが、「全商品」となるととてつもなく大きな表になります。

あと、前回銀行貸出のような金融商品も商品だとモズラーはいっていたワンね

こうなるか

なんでもあり

マルクス風に言うと商品は値段を見せ合って互いに向き合っているので

こんな感じ

魔法陣みたいですね

こうすると usw(などなど) の部分がもれなく全体の一部であることが表現できますね。資本論のこれ。

資本論 S.84 「貨幣形態」のところ

すごい!

ヘーゲルがスプレッドシートのように商品を考えていたということは確実だと思うんですよ。表オタクですからね。

そしてマルクスはそれを互いに対立するものとして円のイメージに拡張した感じに思われます。
こうやって描いてみると。

魔法陣みたいなのゲーテの色相環にも似てます。全てがもれなくあり、関連付けられている。曼荼羅にも似てる?

ほんとうだ

全て漏らさずに考えるのはヘン、カイ、パーンでやりましたよね。

ゲーテの色彩環、そうですね!
ゲーテはリンネの植物分類学を学んで、それを克服するのだけれど、ヘーゲルとマルクスにも似た関係があるようにますます思う

それは「その他」を放っておかないというか、「その他があるじゃん」という批判と言えるんじゃないかしら。
ゲーテのニュートン批判もその形だなあ。

ゲーテの色彩環

丸く把握すれば見えるピンクが、波長のスペクトルでは把握できない、みたいな。
経済学は物価を考えるときに金融商品を抜かす。
そういう感じですね。

こんなイメージになりますね。
CPIは一般物価といいつつ、金融商品や銀行貸出は扱わないじゃん、とか

エクセルで作ってみました!

すばらしい図ができました。

モズラーの言っている Price Level、物価水準とはまさにこのイメージのはず。

わたしたちが新聞やテレビの報道で見る「物価が上がった」というときのそれとはずいぶん違うものなんですね。
同時に、身近なものになっているはずです。

ドックフードの価格や、あなたや私それぞれの給料つまり、労働力の価格もみんな含まれているワンね

モズラーこの文章は「 Price Level 」という言葉の意味をこの感覚に切り替えて感じながら読まないと随所で意味が通らなくなるはずです

次回、この節の本文を読んでいきましょう。


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