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モズラー(MMT発明者)による資本論のような物価水準・インフレ論を精読する⑦物価水準の源泉

A Framework for the Analysis of the Price Level and Inflation という文章を頭から精読するシリーズの第七回。

今回は III . The Source of the Price Level のところを扱います。

きっかけ
Introduction 
I. The MMT Money Story 
II. The MMT Micro Foundation- The Currency as a Public Monopoly 
解説編: ”indifference” って何だろう 
が挟まる)
III. The Source of the Price Level (ここ)
IV. Agents of the State 
V. The Determination of the Price Level 
VI. Inflation Dynamics 
VII. Interest Rates and Wages 
VIII. The Hierarchy of Demand 
IX. Conclusion 

じゃあ始めましょう。四つの節があります。

III. The Source of the Price Level
III. 物価水準の源泉

With the state the sole supplier of that which it demands for payment of taxes, the economy needs the state’s currency and therefore state spending sets the terms of exchange; the price level is a function of prices paid by the state when it spends.
国は税の支払いに要求される手段の唯一の供給者であるので、経済は国の通貨を必要とし、したがって国の支出は交換の条件を決める。つまり物価水準は、国家が支出を行う際に支払う価格の関数である。

There are two primary dynamics involved in the determination of the price level. The first is the introduction of absolute value of the state’s numeraire, which takes place by the prices the state pays when it spends. Moreover, the only information with regard to absolute value as measured in units of the state’s currency is the information transmitted by state spending. Therefore, all nominal prices can necessarily be traced back to prices the state pays when spending its currency.
物価水準の決定には、二つの主要な力学がある。第一は、国家が支出する際に支払う価格によって決まる、国家貨幣の絶対値の導入である。また、国家通貨単位で測定される絶対価値に関する情報は、国家の支出によって伝達される情報のみである。したがって、すべての名目価格は、必然的に国家が通貨を支出する際の価格に遡りうる。

The second dynamic is the transmission of this information by markets allocating by price as they express indifference levels between buyers and sellers, and all in the context of the state’s institutional structure.
第二の力学は、買い手と売り手が折り合う地点の表現である価格によって、市場がその情報を伝達することであり、また、そのすべては国家の制度的構造の文脈の中で行われる。

The price level, therefore, consists of prices dictated by government spending policy along with all other prices subsequently derived by market forces operating within government institutional structure.
物価水準は、政府の支出政策によって決定される価格と、その後、政府の制度構造の中で働く市場の力によって導かれる他のすべての価格から構成されている。

最初のパラグラフが結論で、以下はその説明になっていて英語の文章によくある形です。

だからもし全体を読み終わってから最初の文を読み直して意味がわからなければ、解釈できていないということになっちゃう。

最初のパラグラフの“関数”につまずきます。

関数の話はここでありました。

関数に何か数字を入力すると、何か数字が出力される。

政府の支払う物(品、労働力)の価格を関数に入力すると、物価水準が出力されるという意味ですか?

昔の人が function を函数と訳したのは上手いと思っていて、インプット(複数可)とアウトプットが一つある箱のイメージでいいんじゃないかしら。 

なるほど(^^)

ここは数学の函数のように函数には形があって、「入力する値」と「その形」に分けていると理解するとたぶんわかりやすいです。

第二パラグラフで説明される力学は前者の「入力する値」で、第三パラグラフは「その形」による影響だと解釈してもいい…かな?

経済学を含めたよくある経済談義は前者の話ばかりで後者の議論がない。と言ってもいいかも(いやちょっと違うけど)。

第二パラグラフ

There are two primary dynamics involved in the determination of the price level. The first is the introduction of absolute value of the state’s numeraire, which takes place by the prices the state pays when it spends.

労働力という商品の価格を例にすると、まず国家が労働力の単位と数字を決める。そして実際に支出するということが条件。あたりまえですね。

第三パラグラフ

Moreover, the only information with regard to absolute value as measured in units of the state’s currency is the information transmitted by state spending. Therefore, all nominal prices can necessarily be traced back to prices the state pays when spending its currency.

政府支出が起点になって、あらゆる商品の価格はその情報の伝達によって決まると。

先日知らないおじさんを登場させたので閃いたのですが「誘拐犯の身代金」という「価格」も含まれるでしょう。

ひー!

たとえば一千万円とか、10万ドルとか誘拐犯は考えるけれど、それは政府支出の価格と単位で決まってくる

というと…

当面遊んて暮らせる額、高飛びできる額?

それはわかりませんが、少なくとも「身代金」という価格をこの図の中で考えていることは確実です

身代金も含まれていたとは…万能すぎる!

everything ですから

マルクスもそうなんですよ。
あらゆる商品の価格を考えている。

資本論の図

この「x Ware A」というのが重要で、x量の商品Aにはあらゆる商品が代入されるわけです

なるほど。

第2パラグラフの絶対値はどういう意味で使われているんでしょうか。

「長さ」でにおける「物差し」に相当するものです。
すべてのモノの長さを好きな方法で測定することができますが、メートルでも尺でもインチでもフィートでも、何か基準が必要ですよね。

同じものを測定しても単位が違えば数字が変わります。

なるほど国家が支出する時の価格が、物差しのような基準になる数字になるという感じですか?

まさにそうです!
図にしてみようかな。
政府の支出という言葉から具体的に何を買うのをイメージしますか?
三つくらい

公務員給与
公用車
コピー機リース
出張旅費
文房具

出張旅費は電車賃やバス代とか具体的ですよね?

はい、実費ですね

仮にこれくらいだとすると

マルクス風に書けばこういうことです

1円の価値がこれで固定されてる感じですね!

うーん、そう言ってもいいのですが…

マルクスのこれ、「Goldの価値がそれで固定されている」という言い方をするでしょうか?

あるいは、「物差しの長さは測られるものたちによって固定されている」とは言わない

それぞれの価値を1円で表現している

まあモズラーも the value of the currency と言っているので(笑)

金本位制の場合、政府は金の価格を設定し、他の様々な価格は市場により金との相対価格が調整される。

うん、せっかくなのですこし抽象的な議論をします。
(相対論とか座標を行き来する思考に慣れた後はそれほど高度ではないのですが)

「ある商品の価値は他のすべての商品との関係によって定まる」

このマルクスの表現でも、左辺に右辺と同じ 2 Unzen Gold があるわけですが右辺には何を入れてもいいはずなんですね。表現としてなら。

こう書いてもいい

「金本位制」下の統合政府はゴールドの価格に強力にコミットしていたわけですが、統合政府がコミットしていたのはそれだけではなくて、公務員を雇うことをはじめとした政府支出の価格によって同時にさまざまな価格にもコミットしていたと把握するわけです。 

『現代貨幣理論(MMT)は、納税や純貯蓄のための資金は、政府とその関係機関からのみ発生するものと認識している(Bell 1998)。通貨〔currency, 現金のこと〕は公的独占であるため、価格水準は必然的に政府の調達価格の関数となるというのが、論理の要点である(Mosler 1993)。別の言い方をすれば、通貨の価値は、経済主体が政府と関係機関から直接・間接に通貨を手に入れるために、何をせねばならないかの関数である。』

これ出典は何ですか?

通貨の価値は、経済主体が政府と関係機関から直接・間接に通貨を手に入れるために、何をせねばならないかの関数である。

つまり、誰かが労働や公用車やコピー機や交通手段を政府および関係機関に提供することによって得る currensy によって通貨は基礎づけられるわけですね。

(currency=現金 だと意味が通らないの、もうわかりますよね。。。)

公務員だった時、支払いはほとんど日銀へ小切手と指示書をだして振り込み払いでした

モズラーのハイパーインフレ論は、今の議論とちょうど繋がっています。

そうですね。
MMTの議論はすべてここから出発するというか。

その割には、これまで日本ではほとんど言及されてこなかったところです。

モズラーをちゃんと読む人が少なすぎですね

(てか‘Soft Currency Economics’は1995でなく1993でしたか)

ただわかりにくいのは確かで、自由に思考する努力をかなりしないと意味わかんないと思う

(Soft Currency Economicsはいくつかバージョンがあるみたいなので・・・)

(モズラーが配りながら改訂していたみたいなので)

レイがカンザスシティアプローチのやつで、モズラーをカンザスシティやニューカッスルと並立させていたのは、モズラーのMMTが他の2つのアプローチと対比して独創性がある、とレイも認識していたからかと思います。

ここらへんの話、アメリカのMMTやオーストラリアのMMTからは出てこない話で、Macroeconomicsにも出てきませんし。

その辺、学者の意地というか(笑

ミンスキーやラーナーとかの評価をめぐるミッチェルとレイの間の温度差なんかもねえ

3つのアプローチ全て重要だと思います。

マルクスでまとめればいちばんスッキリするのに\(^o^)/

統合するのは可能なはずなので、その時にとる指針選びがカギかなと。
その前に、3つのアプローチを全て理解することが必要です。

どうかなあ。
マルクスとモズラーという二人の天才の思考を核として、あとはオマケというかその注釈でいいのでは。

マルクスが一般理論でMMTはその特殊理論という形になっている言えると考えております。

カンザスシティは日本でも大凡のところは理解されてると思うので、残り2つのアプローチの理解を広めねばなりません。

MMTは貨幣の場合に限った特殊理論ですね

マルクスのいわゆる一般等価形態に国定通貨が代入された形になっている

そうそう、あとマルクスはここまで国債やデリバティブが爆発的に増えるところまで資本主義が延命するとは思わなかったかも

MMTedでのモズラーのインタビューで、MMTに重要なもの(モズラーが強調している)が二つあると。
それはシークエンスの問題と物価水準の問題。

sequence という言葉を出してくださったので、ここに注目してみましょう。
この文書でもsequenced、subsequent、subsequently という形でこの語が出てくるように特徴的なモズラー語ですが、資本論との一致に驚いてほしいというか。

これは The Source of the Price Level の source という言葉と密接な関係があります。

sequence は時間的な順序の系列のことですが、これはあらゆる価格の sequence を source まで辿っていくと必ず政府支出に行き着くという話です。工学や電気回路と似ていますし、遺伝子の伝達とも似ています。
ミトコンドリア・イブの話など、かなり近い。

シークエンスを遡るとソースに行き着く

ミトコンドリアDNAは母系遺伝するのですが「あらゆる人のミトコンドリアDNAのシークエンスを辿ると、かつてアフリカにいた一人の女性というソースにたどり着く」という話があります。これは事実だそうですよ。

全ての人類の母!

資本論の5章までを“順序”で検索

これはミトコンドリア・イブの英語版 wikipedia から

資本論の交換過程のところ、まさにこれです。
W-G-W-G-W… というシークエンスを考えているわけ。

通貨単位を介したシークエンスは indifferent な水準で W-G-W-G-…とつながっているはず。
たとえば身代金ならば、被害者の身柄との等価交換で犯人にマネーが渡ります。
次に被害者が持っていたそのマネーは…とシークエンスと辿っていくと、最終的に必ず統合政府の支出にさかのぼることができるんです。

W(商品)=身柄、G(貨幣)=身代金

政府支出がすべての価格の母

もし被害者が政府に直接何かを売った人(たとえば公務員とか)であればシークエンスは短い。

ひー

薄給なので持ってるお金には限りが…

困りましたね。どうしますか?

犯人を倒す!

じゃなくて警察に相談。

取引が成立していないじゃないですか!
成立した取引をさかのぼっているわけです

成立した取引をさかのぼっているので、その人はどうしたのでしょうね?と

成立した取引なんですね
借りた…とか?

親戚とかから。

そうですね、全額払えなくて借りて払った人は多いと思います。

シークエンスを辿ります。
次はその親戚さんのマネーはどこから?

定期預金を解約したり

定期預金はいきなり出現しないので、必ずどこかから交換でマネーを得ている

田畑を売ったり?
車を売ったり?

田畑を買った人がマネーを持っていた…
こんな感じでシークエンスを限りなく追いかけるわけです

そうすると最終的にはマネーの源流は政府になるのですね。

通貨の流れ、カレンシーのフローを追いかけると必ずそうですよね、というのがMMTの主張というわけです。

銀行から借りるというパターンは?

この注記を思い出して!

Lending is the purchase of a financial assets such as a promissory note, and therefore is a subset of spending in general, which includes purchases of non financial assets 
貸出は約束手形などの金融資産の購入であり、したがって非金融資産の購入を含む支出全般の部分集合である

あー!

銀行の借り入れは、銀行が「将来の返済という約束」という商品を借り手から買ったということ。

そうでした!

では銀行側は源流にはなり得ない

銀行はその通貨をどこかから手に入れている
(この言い方は語弊があります)

まったく同じようにシークエンスを辿ればいいんです
(ただここはちょっとややこしい。だからモズラーの登場まで誰も断言できなかった)

やはり最終的には源流は政府にしかならないですね

銀行は政府支出または、中央銀行からの借り入れによって準備預金を得ています

なるほど

系列は途中で分裂しますが、その分裂した一つ一つを辿っても必ずそうなります。

分裂というのは、例えば身代金は全額借入でなく手持ちの資金(過去に何かを売って得た)も併用していただろう、とかですね。

なるほど

複数の女性のミトコンドリア系統があっても、最終的には一人に行き着くのと似ていますね

わたくし時々、マルクスやMMTはグラフ理論だ!みたいに言うのですが、そういうことを言いたいんですよね

グラフ理論のグラフのイメージ

頂点はWとGが交互にあって分岐しながら広がっているが、中心には政府がある構造

資本論の直線的な表現を発展させるとそうなりそう。

構造!

The second dynamic is the transmission of this information by markets allocating by price as they express indifference levels between buyers and sellers, and all in the context of the state’s institutional structure.
第二の力学は、買い手と売り手が折り合う地点の表現である価格によって、市場がその情報を伝達することであり、また、そのすべては国家の制度的構造の文脈の中で行われる。

わー!

無意識にモズラーさんぽいこと言いました

思考がシンクロしてきている

わー!ゾクゾクします(^^)

今や上の英語の意味が完璧に「わかる」のではないでしょうか

そんな気がします!資本論では頂点はWとGで表現されるけど、モズラーさんは頂点を売り手と買い手で表現しています。でもどちらも言いたいことは一緒で、構造を表現したいんだなと思います。

脳内で神経細胞が情報を伝達しているような…

よい比喩だと思います

伝達物質はお金や商品なんだけど、情報は価格みたいな…

(資本論もちゃんと売り手と買い手の話を書いているんですけどね)

お、すばらしい
お金や商品は伝達物資で、価格は情報!

たしかに資本論、売り手、買い手の話ちゃんとしてますね(^_^;)

グラフ理論を使う場合もいろいろな表現方法がありまして、頂点は個人にした方がうまく描けるはずです。
商品や貨幣は持ち主がいるので、個人の属性(プロパティ)として扱う要領。

なるほど

いま、わざとプロパティと書きました。
プログラミングでも普通に使う概念なんですがご存じですか?

ファイルを右クリックするとでてくる奴ですか?

プログラミングはやったことが無いです。

ああ、そこでも出てきますね。プロパティは「属性」ですが、もともとは「財産」です。
現代的な解釈を使うと財産は個人または法人の「属性」だと表現できます。

なるほど

プロパティという言葉はアダムスミスやリカードやもちろんマルクスを読むときにとても大事なのですが、それは置いておいて、以前こんな表を作りました

合計だけの表にすると

ネット ファイナンシャル アセット

MMTでしょっちゅう出てくる言葉ですよね

純金融資産(net finacial assets) をこの表のように個人レベルに表記するとそれは個人のプロパティであると言えます。

この表の性別、生年月日、出身地…も個人のプロパティ

おぉ

これが純資産 ( net assets) というプロパティだと別の数字が入りますよね

土地とか…?

売りに出せる商品は全部資産と見なせますから、その評価額を純金融資産に加えます。

土地は純金融資産に入ると。では純資産だと…?

ええと、こうです

あ、そうかリアルアセットには土地が入るんですね

土地とか家屋、車とか

それと、MMTで言う金融資産はIOUだったことを思い出してください。
それで行くと、生命保険は商品、real assetと考えるべき。。。かな?

たしかに

宝くじはIOUか?っていう話はしましたっけ?

(宝くじは去年スペースでお話されてましたよね)

忘れていました。そのうち文章にしましょう(笑

文章化熱望です(^^)

わたくしの感覚だと、宝くじはIOUですが、まあ大枠として重要なのは発行者と所有者が同じ基準で金額評価していたら、それはIOUに入れて考えるべきでしょう。
そうでないものを real assets に入れる。こうすれば everything がどちらかに入ります。

なるほど

表に戻りますと

資本論が、右の net assets というプロパティをキーにして社会の構造を把握しているとすれば、MMTはそのうちのIOUの部分、net finacial assets に注目しているのだということができます。

なるほど

そうすると資本論がMMTを包摂しているかたちになりますか。

MMTも実物資産を考慮しますから概念的には同じと言い張ることもできますが、記述の壮大さはやっぱり資本論に軍配が上がるでしょうねえ。
たとえば国家がなくなっても資本やマネーはあるわけで。

戦国時代みたいなイメージですか?

まあそうですね。
マルクスの生まれたトリーアというところも神聖ローマ帝国の選帝侯の領土の一つだったわけですが、ナポレオンに支配されたりで。
資本論が特定の通貨を基準にせず、より一般的なゴールドを使って記述されているのは当たり前なんです。

なるほど、支配者が変わっても土地に住む人たちは同じですものね。

一方、中央銀行を介した金利誘導や財政支出のオペレーションなんてマルクスはよく知らないわけで、バッファーストックの考え方はMMTに特徴的なところと言えるでしょう。

そしてMMTは通貨単位の net finacial assets の source を特定しモデル化しましたが、厳しく言うと、資産・資本というプロパティの source を論じていません。カンザスアプローチは金融不安定性みたいな問題をクローズアップするけれど、それだと「そもそも論」を欠いているよなーと思うんですよね。

んで「そもそも論」ならば、まさに property 、財産という概念の根拠は何?という問題に行き着きます。
マルクスは資本論の「資本の蓄積過程」のところで、まさにこの問題について先行する哲学、経済学を根本的にひっくり返している。ここはちゃんと読み直されなければいけないでしょうねえ。経済学はいまもそのままですから。

バッファーストック…

バッファーストックは後で出てくるので、この節を先に読み終わりましょう。

The price level, therefore, consists of prices dictated by government spending policy along with all other prices subsequently derived by market forces operating within government institutional structure.
物価水準は、政府の支出政策によって決定される価格と、その後、政府の制度構造の中で働く市場の力によって導かれる他のすべての価格から構成される。

ここはまとめですね。
言いたいことは最初のパラグラフにあって、その説明がここで終わります。

物価水準とは、この図の全商品に入る価格。
商品は二種類あって、まず政府の支出政策で直接定まる諸商品があり、政府の制度構造によって二次的に確定する商品があるというまとめでした。

政府の支出政策で直接価格が決まるものには公務員給与や国債などがありました。

この節はこれで終わりですが、腑に落ちないところはありますか?

ありません(^^)

確認しましょうか
政府支出にはこんなのもありましたが、ではこれはどちらでしょうね?

政府の支出政策で直接決まる価格です

一概にそういえなくてですね、政府の人が電車に乗っても乗らなくても電車代は変わらないのでは

あれ

あ、そうか

国鉄だったら

直接決まるって言えそうですけど

今は民営化されてますものね

そうですね。文房具なんかも

切手代とかも…

一般論として政府は民間からいろいろ買いますが、その価格は政府支出によって決まっていると言えるでしょうか?

政府だけが買う商品があるなら、政府支出によって決まると言えそう。

でも、政府以外の買い手がある商品は

違うっぽい。

でも結局備品買うときって業者の言い値で買ってるような印象も

うんうん

相見積も一応取るけど、結局足繁く通ってくる使い勝手の良い業者とかに決まります。

モデルの最初で政府が通貨制度を導入するときに、最初に人を雇用しました。
そして、雇われなかたった人が納税手段を得るためにモノやサービスを売り始めます。
ここでモノやサービスの価格が決まりますが、政府もそのモノやサービスを買うわけです。

はい

このとき政府は価格を動かすこともできるし、そのまま受け入れることもできる。
だからそれぞれの価格には第一の力学と第二の力学の両方が働いていて、その二つが合成されたものと考えるのでしょうね。

なるほど

two primary dynamics が働いているのだと。

納得です

dynamicsという言葉は力学を想起させます。というか、力学のためにできた言葉でした。

物体の運動の原因を扱う学問、という感じ

なるほど

2つの力、運動がせめぎ合うようなイメージが浮かびました

ですです。
放物運動は、モノに最初に与えた力と重力という二つの力の影響が合わさったもの、みたいな。

なるほど、2つのベクトルに分解できるようなイメージですね

すばらしい

わーい

システム全体で見たときに断然強い支配的な力が政府支出で、第二の力はかなり減衰したものになるはずですね。

というか、すべての原因は政府支出だというビューでした

はい

the price level is a function of prices paid by the state when it spends.
物価水準は政府が支出時に支払う価格の函数である

だったわけですから

function, 函数というのも腑に落ちたと思います。

運動方程式みたいな

函数ってそういうことだったんですね

入力は政府のあれこれの支出の全部(組み合わせ)で、出力は物価水準。

そして函数の形に相当するのは the state’s institutional structure で形が変われば当然出力も変わると。

ふむふむ

形を変える具体例は、税の構造とか。年金を減らしていくぞ!というのもそうです。

消費税率を上げる!とか

幼保無償化とか

グラフ理論の図の頂点となる人の行動も変わりますね

そうですねー
幼保無償化が入力なのか構造なのかは悩みますが、まあどちらで考えてもよいでしょう(笑)、変わりますから。

あ、入力の方ですね(^_^;)

頂点が人だから有機的な構造で、制度によって行動変容して思いもかけない出力が出されそう。

そうなんですよー、だからMMTの人は財政赤字でインフレにできるとかデフレになるとか簡単に言わないわけです

なるほど

そんな単純な話ではないですよね。

そもそもインフレがいいこととか悪いことという話題が出てこないというか

たしかに、これまでそういう話はモズラーさんの文章にはなかったですね

この文書の冒頭のところ、改めて引用しますよ

I was asked to do a chapter on ‘inflation’ under the textbook definition which is ‘a continuous increase in the price level.’ However, under close examination this turns out to be elusive at best. At any point in time the price level is presumably both static and quantitatively undefinable. That’s why even the most sophisticated central bank research uses abstractions, the most familiar being the Consumer Price Index (CPI) which consists of selected goods and services designed to reflect a cost of living rather than ‘the price level.’ Nor can central banks determine a continuous rate of change of this abstraction. They can only tell you how the CPI has changed in the past, and they can attempt to forecast future changes. Even worse, they assume the source of the price level to be entirely historic, derived from an infinite regression into the past that, in theory, predates the birth of the universe.  
私は、「物価水準の継続的な上昇」という教科書的な定義の下で、「インフレ」の章を担当するよう依頼されました。しかし、よくよく調べてみると、これはよくてもつかみどころのないものであることがわかった。どの時点でも、物価水準は静的であり、定量的に定義できない。そのため、最も洗練された中央銀行の研究であっても、抽象的な表現を使っている。最も身近なものは消費者物価指数(CPI)で、これは「物価水準」ではなく、生活費を反映するように設計された特定の財やサービスから構成されている。また、中央銀行はこの抽象的な指数の連続的な変化率を決定することはできません。中央銀行ができるのは、CPIが過去にどのように変化したかを伝えることと、将来の変化を予測することだけである。さらに悪いことに、中央銀行は物価水準の源泉を、理論的に宇宙誕生以前の過去への無限後退に由来する、完全に歴史的なものであると想定しているのである。

今や最後の文の意味が分かると思いますよ

中央銀行は歴史的なものに源泉を求めている…?確実にわかるのは過去のCPIの変化だけだからですかね。

身代金にせよ、どの価格にせよ、取引を辿っていくと必ず政府支出という源泉にたどり着くわけです。
なのに中央銀行は話をそらして、それがもっと前、宇宙誕生より前と想定しているということになるよねという話なんです。

なるほど

動力因を考えるのがダイナミクスでしたが、これはライプニッツが作った言葉だったと思います。
トマスやデカルトやスピノザが、神という「すべての始原」を証明しようとしたのと似ているんですよね。

つながった!

よかった!

今までで一番カタルシスを得たというか、伏線回収がすごかったです。

そうなんですよ!
自分もモズラーからそれを得たのだけど、もっとみんなにわかってほしい一心\(^o^)/

きっと伝わるはずです\(^o^)/


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