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モズラー(MMT発明者)による資本論のような物価水準・インフレ論を精読する⑬需要のヒエラルキー

A Framework for the Analysis of the Price Level and Inflation という文章を頭から精読するシリーズの第13回。いよいよ最終回になります。

今回は   VIII. The Hierarchy of Demand  以降のところですが、過去記事のリンクも付けました。

きっかけ
Introduction 
I. The MMT Money Story 
II. The MMT Micro Foundation- The Currency as a Public Monopoly 
解説編: ”indifference” って何だろう が挟まる)
III. The Source of the Price Level 
IV. Agents of the State 
V. The Determination of the Price Level 
VI. Inflation Dynamics 
VII. Interest Rates and Wages 
VIII. The Hierarchy of Demand ⑬(ここ)
IX. Conclusion ⑬ (ここ)

もうあとはこれだけです。

VIII. The Hierarchy of Demand
VIII. 需要の階層性

Demand originates with the state. Without state spending the value of the currency is unspecified and there is no aggregate demand. Only subsequent to state spending can the currency obtain absolute value and non-government spending take place.  
需要の発生源は国家である。国家が支出しなければ、通貨の価値は不特定であり、総需要は存在しない。国家による支出があって初めて、通貨は絶対的な価値を獲得し、政府以外の支出も行われるようになる。 

IX. Conclusion
IX. 結論

This chapter provides a framework for the analysis of the price level and inflation. The framework is that of the currency itself as a public monopoly, with the state setting nominal demand with its tax liabilities, as well as  providing the tax credits that allow compliance with those tax liabilities.
本章では、物価水準とインフレ率の分析のためのフレームワークを提供した。その枠組みとは、通貨そのものが公的独占物であり、国家がその納税義務によって名目需要を設定し、またその納税義務を果たするための税債務を提供する、というものである。

This understanding entirely explains the source of the absolute nominal value price level over time. Also implied is the role of interest rates with regard to the academic definition of inflation and the influence of policy rates on market-determined expressions of relative value.
この理解によって、絶対的な名目価値の物価水準の時間的な変化の原因がすべて説明できる。また、学術的なインフレの定義に関する金利の役割や、市場で決定される相対的価値の表現に対する政策金利の影響も含意されている。

「すべて説明できる」\(^o^)/

もうスラスラ読めるとおもいます。

一転、最後のところ。
物差しを提供することが絶対的な名目価値の提供であり、諸価格は相対価値を表すということになります。

さて。

ユニバーサルベーシックインカムがどうしていけないかをこの枠組みで論じられたらもう大丈夫。
日本語話者には数人しかいないであろう「MMTの枠組みを理解したと人」ということ!

ユニバーサルベーシックインカム の定義はこれで行きましょう

[Basic Income is] “a periodic cash payment unconditionally delivered to all on an individual basis, without means test or work requirement”

”定期的な現金での給付で、資産調査や労働要件なしにすべての個人に無条件に提供されるもの”

まず、すべての個人に対して給付されるということは、そのぶん一人一人の通貨への需要を減らすということで、政府が購入できる労働力や財やサービスが減ります。政府の力が弱まるということは、福祉や教育など公的な領域が小さくなり私的な裁量や都合に左右されやすくなります。

それに加えて

給付はそのまま物価水準の底上げへつながり、生活コストの上昇へつながる。

細かいですが、通貨への需要を減らすというのはまさに通貨への需要を満たすために支給するのだから言いたいことが伝わらないと思う

たしかに

もっと適切な表現があると思います。saving desire

あぁ〜

セイビングデザイアを減らす!

それと重要なのは、所得に対する

不労所得の割合が増えることにより

相対的に労働価値を切り下げてしまうこと!

セイビングデザイアを減らす!は事後なので、そう言うよりも「セイビングデザイアを満たすから」の方が伝わりそう

たしかに

あと、もう一つ同じことなのですが
「給付はそのまま物価水準の底上げへつながり」そのまま?

to the extent なんです
(前回も出てきました)

貯蓄に緩衝されるんでした(^_^;)

詰めが甘い〜 

「セイビングデザイアを満たす部分」と「物価水準を引き上げる部分」のどちらかに向かうということですね。
理解はもう十分!

単位を落とすかと思いました!

そうだ、大事なことが
上の悪いサイクルから脱出する方法が一つだけありますが、どうすれば?

まず金利はゼロにしますよね。

ふむ

それと労働価値の切り下げに対しては、就業保証が必要です。

就業保証の考え方ですが、サイクルを止めるにはどのように考えればいいでしょうか?

つまり、物価に合わせて引き上げていたらサイクルは止まらない

就業保証はアンカーとして働きます

労働価値の底を提供すると同時に、賃金水準の過度な上昇を抑えるから。

物価が下がったり上がった時には?

物価が下がり賃金水準に下降圧力がかかっている時は、就業保証の賃金は下がらないので就業保証が労働力を吸収します。物価が上がり賃金水準に上昇圧力がかかっている時は、就業保証の賃金は上がらないので、労働力は就業保証から放出されます。

これはですね。
「アンカーになる」でなく「アンカーになっている、アンカーを維持する」と考えないといけないということなんです。物差しを変えてはいけない。
マズいことがあるならば物差しは変えずに、原因を変える。

なるほど

お疲れさまでしたー
以上でモズラーはおしまいですが、予想をだいぶ超える収穫がありました

ほんとですか!

グラフモデルはかなり未来の教科書のモデルになるはずですから

おぉ〜!

歴史的な瞬間に立ち会った!

資本論もこんな風にやりたいんですよ

これは楽しみ(^o^)

おしまい


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