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White Paper: MMT 翻訳の舞台裏 その2

 サイト経済学101に翻訳をアップしたときの舞台裏。
 その1はこちら

さて、わたくしの専門(笑)は文学作品における言葉なのですが、たとえばある一人の詩人に注目する場合、その時代およびその中での詩人の言語空間の位置づけを把握せずにある一つの詩だけを解釈しようとしても意味がありません。

provision という言葉は一般的にはかなり odd な部類だと思いますが、だからこそモズラー研究においては注目しなければならない。

本人へのインタビューも大事だし、他の個所におけるその用例を探して参考にするのですね。

2020年のこのインタビューは参考になるでしょう。

Eureka Report ‘The money story’ told by a father of MMT

これは一級の資料です。
これが存在する以上、これを読まずして White paper を翻訳するのは無謀と言ってもいいかも(笑

実に面白い
奴隷制度に関して
I mean, there’s different ways to provision government. We pretend to be more civilised for this course of taxation.

これも面白いですね。

MMTを伝道したいならここ↓は暗唱できるくらいにしておきたい(笑

But for me, the story begins with a state that wants to provision itself. You’ve got a government, in this case, it was Pompei and I’ll tell that story in a minute, but the government wants to provision itself, it wants people in the military, it wants a public health department, it wants public education and it wants all kinds of things, a legal system… There’s been some determination that that somehow serves public purpose. You’ve got a government that needs to provision itself with people and food for the cafeteria and weapons and whatever it needs – so how do you do that?
That’s how the money story starts for me. What happened was, as a point of logic, that’s where the money story starts. What they do is, sure, they can come up with a currency but how do you get anybody to accept it, as Minsky had said, “Anybody can come up with money, it’s how do you get anybody to accept it.” The United States can come up with this new thing called the dollar, but there’s nothing for sale with a dollar price tag on it when you first come up with your new currency…

ここも…

Right, so what you do is you establish a tax liability. That’s what comes first. First is a desire to provision yourself, to be able to have soldiers and judges and lawyers, so the next step to do that is to put a tax liability on and something that nobody has.

チャーネバの money monopoly 論文における政府でも、マネーだの財政支出そのものだのが目的なのでなくて、消防士がいる社会が provision されるという話なんですね。
それ抜きにマネーの話をするのはおかしいだろ?とモズラーは言っている。

なるほど

このインタビューは2020年4月ですが、ちょうど時期もWhite paper と一致していて格好の解説になっていますよね。
同じように、先日のヘッドホンによるインタビューも公開されれば貴重な資料になる。

あ、こんなのもあった。

ここに注目

CL: I see your point. Why is there demand for fiat money, then, if it has no intrinsic value?
WM: Let’s start at the beginning… The government wants to provision itself. It wants soldiers. It wants a legal system. It wants to move goods and services that are currently in the private sector to the public sector.

「国を形作る」っていう感じか

ここにも出てくる “We pretend to be more civilized.”

”I liked the idea that the world understands things one way when in fact it’s another way – which is what he was talking about.”

確かに文学に限らず時代や社会のコンテクストの中で汲み取らないと浮かび上がってこないものがありますね。

翻訳における言葉の問題についてこんなつぶやきが流れてきました

翻訳って、原文がその空間でどのように受け取られるか、また、どのような意図で発せられたかを理解したうえで、訳語が翻訳先言語の空間でどのように受け取られるかを考慮すべきなんですよね(笑

カントもそうなのですが、モズラーの気持ちとしては「主流の言説は現実と異なっており、現実を分析すると主流の言っていることとあべこべになっている」ということをlogicを起点に論証しようとしているわけです。
そのようなテキストの翻訳を「主流101」を標榜するサイトに載せる行為の政治性もまたあるんですよね。

モズラーがよく言う base case って何?

さて、White Paper もそうですがモズラーは「変動相場制、ゼロ金利固定、JGPの三つがMMTのベースケースである」みたいによく言います。

ぼくとしては base case というより  floor/ground case みたいに言うべきじゃないかしらと思ったり。

そういえば base case という言葉もまあ odd  だけれども、どちらかといえば経済学的、投資家的な思考かもしれません。
こんな説明を見つけました。

https://yhec.co.uk/glossary/base-case-analysis/

”A base case analysis usually refers to the results obtained from running an economic model with the most likely or preferred set of assumptions and input values.”

この定義はぴったりですよね。

経済分析が未来を考えることであるなら、それは必然的に複数のシナリオを比較することになります。
このとき基準がぜったいに必要になって、それは投資も同じ。

投資の場合は国債利回りが基準レートになりますよね。投資理論の最初に教わる。

政府が何らかの社会を provision したいとして、消防士が欲しいとか法整備が必要とか政策はいろいろありえるけれど、プラス金利を設定するという政策はまったく意味が分かりませんよね。JGをしない意味もわからない。

これをそのまま注釈に書いておいてもいいかもしれませんね。

よいことを思いついたかも。

日本の読者のためにこのような注を入れたいのだけどこれでよいでしょうか?と、モズラーおじさんに聞く!

了解です(笑)

たぶん most likely or preferred には違和感を覚えてくれると思うんですよね。
論理的、観念的なものというか。
わたくしは ウェーバーの ideal types が近いと思っているのですが’(おじさんは知らないだろうな)回答が楽しみです。

preferred ではあるかもだけれど most likely ではないものね。それがハッキリしたらよいな。

おじさん、Base case だけでめちゃくちゃツイートしてるんですねぇ

“base case for analysis”

そこまでがセットみたいですね

for purposes of と強調する時も

“Inflation comes from modifications of that structure.“という説明の仕方からも、インフレや失業の発生は、base case(基準事例?規範事例?)からdeviateすることに起因すると読めるのかなぁと

「MMTは失業をなくすためにJGを提唱している」(prescripitive)じゃなくて「JGというbase caaseが欠けていることが失業の残存をもたらしている」

あることの analysis のためには base case として set of assumptions and input values がいるでしょ、ってことだと思っています。

full empolyment が base case だとすると、失業の残存はそこからの乖離として把握されることになりますよね。

ですね、full employmentがbase caseでなければ“residual”なんて言葉は普通つけないですものね。

ですねえ

そうすると、主流派やリフレにとってはNAIRUの存在がbase caseなのかなと考えてみたり

NAIRUはかつての代表的指標だったけれども今はそうではないのでその批判は当たらないと思われてしまうでしょう。
MMTだけが full employment、job gurantee をベースケースとしていると言った方が広くて強いです(笑)

パレート最適とか、厚生の最大化とか言う人が多いでしょう?

さきほどゲーテちゃんさんが紹介なさったモズラーのつぶやきの二番目ですが、ここから始まっています。

金利の支払いを起点にインフレになるメカニズム

MKC Buckaroo (大学内通貨)は今も続いているわけですねえ

へえ
Denison University

もう一つの Franclin Franc というのを検索したら、なんかインタビューが見つかった!

めちゃめちゃおもしろい

MM: What is your view on the proposals to use the job guarantee as part of the Green New Deal and employ those who are going to be rendered unemployed by shutting down coal mines or oil rigs in the ocean and employ them, presumably in a job guarantee program? Do you think that makes sense?

WM: I consider myself a progressive, okay. To me, that’s not a progressive way to provision the public sector with labor. If you want to hire these people, just hire them! Hire the coal miners to do whatever you want them to do. Don’t put them in a job guarantee at ten Euro an hour. If the regular public service job is €30, just hire them a 30 Euro. The whole point is not to undercut the base scale of the public sector. Once you fully provision the public sector with the green new jobs wherever you want, then the rest of those people you want to transition into private sector, they’re the ones in the job guarantee.
And then you conduct a fiscal policy, you give government grants, loans or whatever you want to do to get the private sector to hire them. If you don’t want them in the private sector, if you want them in the public sector, just hire them.

ここ、公務員雇用(含グリーン雇用)とJG雇用の区別のQ /Aとしてバッチリの回答ですね。

JGはpublic options

Molser はそういわず base case と言っている感じがします。そこは彼の特徴じゃないかな。

政府に何かやりたい目的があるならただ hire すればいい。
JGは residual な失業が対象ってかんじかな。

なるほど“rest”と“residual”は同じことを指しているのかしら。 

語源的には別系統だったような気がしますが、論理的な意味合いはほとんど同じではないでしょうか。

しかしこれ面白いな。
翻訳しよっかな(笑

おじさんから返事来ました

もはや「著者に確認したところ、…」でこのまま注釈に含めてもよいのでは感

GJ!
やっぱインタビューだいじやね。
質問文みせてよ(笑

JKの拙いいんぐりっしゅを見せるのは恥ずかしいですわ:のぞき見している顔:

いえいえ、ありがとうございます。
素晴らしいやりとり。

さらに。

おじさんは親切

:ハート:

言葉が通じ合った瞬間を目撃しました

彼のような宇宙人には媒介者が必要なんですよやっば。

今回わたくしに声をかけてくれたのを嬉しく思いましたがイメージを大きく超えた収穫がありました、

個人的にはalianというよりcosmic manという感じを受けます。世界を広げてくれる人。

言葉のユニークさが、ですね。
経済学の本はほとんど読んでいなかったらしく。

モズラーおじさんとゲーテちゃんの言葉が噛み合った瞬間を目撃したワンね。

次回は後日談。

なんとわれわれの提案でモズラーおじさんが White Paper を修正することに
\(^o^)/

対話21:生存権とMMT?

お久しぶりです。

この話が回ってきてsorataさんと某所で短い会話をしました。

労働の対価はJGでそこを設定するとして、生存権に基づく保証にたいする対価ってMMTerのあいだで議論されてませんよね

うーん、どうだろ

>生存権の保証

(年齢や障害などで)働くことができない人、働く意思のない人に対して、JG賃金を下回る額で支給は必要ですよね?
その場合、支給は物価水準にどう影響するか?
が疑問なのです
果たしてそれはBIと区別がつくのか?

それがMMTerのあいだで議論されていないとは言えない、という立場をとってみます。

たとえば Levi の試算などでも healthcare や childcare はいつも含まれています。そうした社会保障について、彼らはむしろしょっちゅう語っているようにぼくには見えるんですよ。

あとはこうしたソーシャルケアの設計にかかっている。

ソーシャルケアを考えるということは、実は基本的生存権を考えるということと同じことのように思われてきます。

この金額はJG賃金を下回る必要はなくて、それはたとえば重い障害のある人の生活を考えるとすぐにわかると思います。そういう子供とか。

自分としてはスッキリしましたがどうでしょう(笑

働く気がない人はどうでしょう?

場合分けした方がいい…かな
上の、何もしなくても年収7000万円やその家族は放っておいて。

たとえばヤマギシズムのように社会と交わらずに自給自足したい集団もありえますね(労働はしています)。あと放浪の禅僧とか、そういう人を除くと問題は誰かが困っているときですね

困っていて、自分または周囲の人によって社会的包摂が必要とみなされる人で、働きたくない人はソーシャルケアの対象になると思います。 

すぐに思い浮かぶのは自閉症のひとたち。

自閉症に代表される発達障害者の就労支援をやっている人たちがいるのだけど、JGPってこれだよなって思うんですよね。

こういうの
https://tasuc.com/service/tryfull_lwc/

おまけの一言

 なんかJGPというものを変に批判したり、わざわざそれをMMTから切り離そうとして独自路線を突っ走ろうとする人たち、いるじゃないですか。

 彼らが現実の社会保障をまじめに考えているとはわたくしには見えない。上と重複するけれど、 政府に財政制約がないならば、ソーシャルケアを考えるということは、実は基本的生存権を考えるということと同じこと であり、反対に、基本的生存権を考えるということは、とりもなおさず基本的就労条件と社会保障の組み合わせを考えるしかないじゃん?