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〈1-9〉
Nehmen wir ferner zwei Waren, z.B. Weizen und Eisen. Welches immer ihr Austauschverhältnis, es ist stets darstellbar in einer Gleichung, worin ein gegebenes Quantum Weizen irgendeinem Quantum Eisen gleichgesetzt wird, z.B. 1 Quarter Weizen = a Ztr. Eisen. Was besagt diese Gleichung? daß ein Gemeinsames von derselben Größe in zwei verschiednen Dingen existiert, in 1 Quarter Weizen und ebenfalls in a Ztr. Eisen. Beide sind also gleich einem Dritten, das an und für sich weder das eine noch das andere ist. Jedes der beiden, soweit es Tauschwert, muß also auf dies Dritte reduzierbar sein.
次は二つの商品を考えよう。例えば小麦と鉄だ。両者の交換の関係がどのようになっているとしても、それは常に一つの等式で表すことができる。つまり所与の小麦の数量値(Quantum)に対して、どれだけの数量値(Quantum)の鉄が等置されるかの式で表すことができる。たとえば「1クォーターの小麦=aツェントナーの鉄」である。この式は何を語っているのだろうか? それは、同じ大いさの一つの「共通なもの」(ein Gemeinsames)が、二つの違った物体のうちに存在しているということである。小麦と鉄の両者はだから「ある一つの第三のもの」と等しい。この第三のもの自体は「あるもの」ではないし「別のもの」でもない。交換価値である限り、それはこうした第三のものに還元されうるのでなければならないのである。
Nehmen wir ferner zwei Waren, z.B. Weizen und Eisen
次は二つの商品を考えよう。例えば小麦と鉄だ。
はい。
Welches immer ihr Austauschverhältnis, es ist stets darstellbar in einer Gleichung, worin ein gegebenes Quantum Weizen irgendeinem Quantum Eisen gleichgesetzt wird, z.B. 1 Quarter Weizen = a Ztr. Eisen.
両者の交換の関係がどのようになっているとしても、それは常に一つの等式で表すことができる。つまり所与の小麦の数量値(Quantum)に対して、どれだけの数量値(Quantum)の鉄が等置されるかの式で表すことができる。たとえば「1クォーターの小麦=aツェントナーの鉄」である。
Austausch-verhältnis、交換-関係なので「交換(の)関係」と訳されますが、Verhältnis を重視したのがヘーゲルです。
この訳し方に悩んで間が開いてしまいました。
そうなんだ。
先日、川崎誠の「資本の運動には際限がない」― 「論理的構文論」による『資本論』読解 ―という論文を眺めていたらこんな一節がありました。
『大論理学』におけるキーワードの一つである ‘Verhältnis’の訳語「比」については、あらか じめ以文社版訳者(寺沢恒信)の注 ― 量論 におけるものだが ― を参照しておくのがよ かろう。
[ここでは]事柄の内容に即していえば 「比」というよりも「相関関係」と訳すべ きであるが、それでは本文に述べられたこ ととの連関がつかなくなるので、無理を承知でこう訳した。要するに、ドイツ語でいえば無理のないことが、日本語に訳すと、 どう訳しても無理になる。日本語では「比」 =「相関」ではないから。(1 p.451訳者注 51)
‘Verhältnis’ は「ある何か」が「別の何か」と対峙する「比」であり「関係」なんだよな。
ふうむ
いつかちゃんと論じたいけれど、語幹の halt が大事なんです。halten は「持っている」という動詞で、Inhalt は中身、内容、容積。
Inhaltはすでに<1-6>に登場していました。
「使用価値は、富の社会的な形式がどんなものであるかにかかわりなく、富の素材的な内容(Inhalt)をなしている。」
内部に持っているものという感じワンね。
うん、Inhalt の In が内部を表すことは英語の in からも類推できると思うけれど、一方、halten に ver がくっつく ver-halten という動詞は「持つようにする」という感じが出る。
「1クオーターの小麦」という「あるもの」は、「aツェントナーの鉄」という「別のもの」に手を伸ばして「1クォーターの小麦=aツェントナーの鉄」という関係を取り結ぶ。
Was besagt diese Gleichung?
この式は何を語っているのだろうか?
Gleichung を「式」としたけれどこれも、「1クォーターの小麦とaツェントナーの鉄が等置されるとはどういうことだろうか?」と訳してもいいところ。
Gleichungは「等置すること」でもあるから。
確かにこれは不思議なことなんですよ。
鉄は小麦ではないし、1と a は多くの場合違う数字が入る。
「どこが、何が等しいんだ??」と宇宙人は思うでしょう。
確かに。
単位すら違うし。
なおクォーターは容積の、ツェントナーは重さの単位です。
daß ein Gemeinsames von derselben Größe in zwei verschiednen Dingen existiert, in 1 Quarter Weizen und ebenfalls in a Ztr. Eisen.
それは、同じ大いさの一つの「共通なもの」(ein Gemeinsames)が、二つの違った物体のうちに存在しているということである。
そうでしかありえない。
ここで大事なのは、等しいものがあるから等置されたと言っているのではなくて、人間たちは現に等置しているのだからそこには人間たちにとって「等しいもの」が存在するはずだと言っているわけです。
おおそうか!
Beide sind also gleich einem Dritten,
小麦と鉄の両者はだから「ある一つの第三のもの」と等しい。
das an und für sich weder das eine noch das andere ist. Jedes der beiden, soweit es Tauschwert, muß also auf dies Dritte reduzierbar sein.
この第三のもの自体は「あるもの」ではないし「別のもの」でもない。交換価値である限り、それはこうした第三のものに還元されうるのでなければならないのである。
ここはいろいろ語りたい。
an und für sich
カント的な an-sich-sein ではない形で存在するものが語られている。
第三のもの、ワンね
復習すると、カントは人間が認識するのは Ding an sich(モノ自体)ではなくて、人間はそれを空間や時間などのカテゴリーを通じて知覚し判断するとしたのでした。
客観的
しかしこれだと二元論に陥ってしまうのでヘーゲルは何としても避けたい。
すると人とモノの関係は、こういうことになる。
こんな感じかなあ。世界には無数の人やモノがあって様々な関係を取り結ぶわけ。
ふむふむ。
『精神現象学』の、主人と奴隷とモノの関係もこの図で行けるような。
そうだね。
ところが、ここで出てきた「第三のもの」は、それ自身、そうしたものではない。
それは「あるもの」と「別のもの」が等置されるときに、しかも「あるもの」とも「別のもの」とも違うかたちで、ある。
それが「ある」ということが論証されているということワンね。
だからぼくはここはすごく好きなんです。
さて次回は<1-10>
これも面白いよね。
〈1-10〉
Ein einfaches geometrisches Beispiel veranschauliche dies. Um den Flächeninhalt aller gradlinigen Figuren zu bestimmen und zu vergleichen, löst man sie in Dreiecke auf. Das Dreieck selbst reduziert man auf einen von seiner sichtbaren Figur ganz verschiednen Ausdruck – das halbe Produkt seiner Grundlinie mit seiner Höhe. Ebenso sind die Tauschwerte der Waren zu reduzieren auf ein Gemeinsames, wovon sie ein Mehr oder Minder darstellen.
このことは簡単な幾何学の実例で考えると明瞭になる。多数の直線で囲まれている図形の面積を計算し比較するために、それはいくつもの三角形に分割される。三角形は、その目に見える形とはまったく異なる表現─その底辺と高さの積の2分の1─に還元される。同じように、商品たちの交換価値も、その多寡を表すある「共通なもの」に還元されるのである。