ホーム » ことば » モズラー(MMT発明者)による資本論のような物価水準・インフレ論を精読する③MMTの貨幣論

モズラー(MMT発明者)による資本論のような物価水準・インフレ論を精読する③MMTの貨幣論

の続きです。

A Framework for the Analysis of the Price Level and Inflation という文章を頭から精読していきましょうというわけですが、次のような構成になっています。

きっかけ
Introduction 
I. The MMT Money Story 
(ここ)
II. The MMT Micro Foundation- The Currency as a Public Monopoly 
解説編: ”indifference” って何だろう 
が挟まる)
III. The Source of the Price Level 
IV. Agents of the State 
V. The Determination of the Price Level 
VI. Inflation Dynamics 
VII. Interest Rates and Wages 
VIII. The Hierarchy of Demand 
IX. Conclusion 

いよいよ本文の精読に入ります。今回は I. The MMT Money Story のところを。

まず The MMT Money Story というタイトルですが、story を「物語」とするよりも、これこそ「論」というべきだと思いました。
というのは、円やドルのような「国定通貨」というものは、税制度と財政支出が一体となって運用されるシステムにおいて観測されるものだという把握をするからです。

The MMT money story presumes a state that desires to provision itself via a monetary system sequenced as follows:
MMTのマネーストーリーは、以下のような通貨システムによって自らを供給したいと望む国家を想定している。

1.Imposition of coercive tax liabilities 強制的な税負担の賦課
2.State spending  国家支出
3.Payment of taxes and purchase of state securities 税金の支払い、国債の購入

この説は①でもすこしやりましたが改めて。

provision itself は「自己規定する」がよいでしょうかね。

provisionには規定という意味もあるのですね

pro-(あらかじめ)vision(見ること)ですから、provision oneself となると「将来の自己をどのように見るか 」、従ってだから「自己規定」ですね。

さて2の注記が大事だという話を前回しましたね。

Lending is the purchase of a financial assets such as a promissory note, and therefore is a subset of spending in general, which includes purchases of non financial assets
機械翻訳:貸出は約束手形などの金融資産の購入であり、したがって非金融資産の購入を含む支出全般のサブセットである

サブセットは「部分集合」でした。
つまり貸出なんかも spending(支出)に含まれます。

この考えだと日銀や年金の株買いだけではなく、政府系銀行による融資や債務保証も「政府の spending」なのです。ここがMMTの特徴であり大事なところですね。 

次は、上の1~3の詳しい言い直しです。機械翻訳はかなり気に入らないので手を入れました。

同じことをもう少し詳しく書くとこうなる:

1. The state imposes tax liabilities with penalties for non-payment. The tax credits required for the payment of taxes are units of the state’s currency, issued only by the state.
国は、不払いに対する罰則を伴う納税義務を課している。納税は、国家のみが発行する国家通貨単位で為される。

2. The tax liabilities, by design, create sellers of goods and services seeking the appropriate tax credits in exchange, the latter by definition being unemployment.
この設計によって税金債務が、商品やサービスを売り手を生み出す(それとの交換で納税手段を得ようとする)。このうちサービスを売るものは失業状態であると定義できる。

3. The state then provisions itself by spending its currency to purchase the goods and services it desires.
国家は、次に通貨を支出し、自らが望む財やサービスを購入することによって自らを規定する。

4. Taxes can then be paid and, if offered for sale by the state, state securities can then be purchased. 
ここで初めて税が支払えるようになる。また国家が国債を発行すれば、それを購入できるようにもなる。

5. State spending in excess of tax receipts remains outstanding as the net financial assets in the economy that fulfill savings desires until used to pay taxes.
税で受け取る分を超えた国家支出分は、納税に充てられるまで経済の中に純金融資産として残り貯蓄欲求を満たす。

そして2には注記があります。

注2
Unemployment defined as those seeking work in exchange for the state’s currency
失業とは、国家通貨と引き換えに仕事を求める人と定義できる。

納税義務がない世界では失業者も存在しないということですか?

通貨制度以前の話はこの話の射程に含まれませんよね。

最初に政府が納税義務を課し、財政支出がされる前は、全員が失業しているとみなせるというわけ。
通貨による納税義務だけがあって、通貨が存在しない世界。

ここで国家がたとえば給料を通貨で支払う兵士を募って、採用された人がまず失業者ではなくなります。

そうですね。

2で、商品を売る人とサービスを売る人を分けて、サービスを売るものは失業状態と分けるのはなぜですか?

兵士を雇った次は、それ以外の人たちを二種類に分けることができますね。
「持っている物を売って通貨を得ることができる人たち」と「労働するしかない人たち」。

なるほど

今回も、またまたモズラー「命取りに無邪気な嘘 1/7」から引用します。
この story はこれとまったく同じことを言っているんです。

うっとりしますね(笑

このように人々は class 分類されているということを始めに言ったのはプルードンかな? 

qualitative な話をしています。

上でもサブセット (部分集合)の話が出ました。
「集合を作る」とか「集合で考える」ということは「 qualitative な議論をする」ということに他ならないわけですね。
そして商品という全体集合の中には金融商品というサブセットがあれば生活必需品というサブセットもありました。
同様に、人々という全体集合には資本家集合と労働者集合がある、みたいな。

MMTは税が失業を生むという言い方をしますね。この意味はあまり追求されていないと思います。私も理解していないです。

石倉先生が言われた「オリジナルの議論を、どこまで「一貫したもの」と把握できるのかを考え抜く」ことではないでしょうか。
終わりはないんですね。

どの単語、どのフレーズに違和感を感じるかは重要で、そこが面白いですよ。
どうしてこの注記があるのか?、とか。
「税が失業を生む」とあったときにこちらは「失業と言っているのはどういうことだろう?」ってなりますよね。モズラーのこの文章にはその説明が書いてあると思う。

ひとつは政府から見たときに、自らを provision するためには人を動かさなければなりません。
税を課すことによって「通貨を入手するために時間を売る人たち(=失業者)」がクリエイトされる。だから例えば兵士を雇用することができるようになります。あと実際、税(もちろん社会保険料込み)がなければわたしたちはこんなに賃労働をするでしょうかね?

命取りに無邪気な嘘 1/7」ならこの辺の議論に相当します。

失業者を「解雇された人」みたいに考えると混乱しますが「通貨を入手するために時間を売る人たち(=失業者)」と把握する要領でどうでしょう。

素直に読むとそうとしか読めませんよね

なるほど

二つ指摘したいと思います。
この「定義」は一般的な失業の定義よりもずっと広く、かつ、それを含んでいますね。

昼間の仕事だけでは足りないから夜働く必要がある人、とか、生活保護に頼らざるを得ない人とか…

もう一つは、先走りますが価格水準との関係を考えてみましょう。
兵士の給料は一万クラウンでも、百万クラウンでも、なんなら一億クラウンでもよくて、とにかく政府が最初に決めることでモデルが動くわけです。

チキン、トウモロコシ、衣服や、散髪、医療などの価格はそれぞれの場合でどうなるか、考えてみると?

租税債務への支払いと生活費、貯蓄分の通貨を入手する必要がありますね。 

給料が1万クラウンなら生活物資はその給料で生活できるくらいの物価になり、百万クラウンなら物価も100倍になる?

物価水準が100倍になるということですね。

ついでに、増税をすると失業は増えることになりますよね。

物価水準と繋がっている話ですか?

自由です!

増税すると、通貨(納税手段)への需要がより高まる

パート主婦というクラス(集合)に属する人がいちばんわかるかも

求職せざるをえない!

追加の労働!

働く時間を増やさざるを得ないですからね!

なっとく

これ失業の意味を狭くとらえる人には通じなくなるんです。
消費税増税で失業率は上がりましたか?、みたいに。

ケインズだったら賃金の下方硬直性のせい、といいそう(笑

アベノミクスって増税でみんな働かざるを得なくするのが目的だったのではと思えてきました

かるちゃんから見るとアベノミクスは何?

具体的に何をしたか?

消費税が上がった、旦那(公務員)の給料が下がった(ひと世代前に比べて)、退職金制度が変わった(積立式になった)、社会保険料上がった…

株については全く持ってないから分かりません

あとは保育無償…

消費税に関しては「アベノミクス」支持の人の多くも「あれが失敗だった」と言うんですよね。
ということは「アベノミクス」の核心は別のところにあるのかなあ。

量的緩和?

うん、やっぱ「金融政策」という「第一の矢」に特徴づけられるのでは。

失業率の(見かけの)低下、株価の高止まりあたりが支持されているんじゃないかと

とある経済学者さんの日記

(まあいいや)

株主と資本家階級には恩恵があったということですよね。

MMTer が一貫してバーナンキの「量的緩和」を批判するのはそういうわけです

なるほど

さて
もう次やその次の節を予習した感じになっているのですが「一貫したものとして把握する」ようにつづけて行きましょう。


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です