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モズラー(MMT発明者)による資本論のような物価水準・インフレ論を精読する⑥MMTのミクロ的基礎(その3)

A Framework for the Analysis of the Price Level and Inflation という文章を頭から精読するシリーズの第六回。

きっかけ
Introduction 
I. The MMT Money Story 
II. The MMT Micro Foundation- The Currency as a Public Monopoly (ここ)
解説編: ”indifference” って何だろう 
が挟まる)
III. The Source of the Price Level 
IV. Agents of the State 
V. The Determination of the Price Level 
VI. Inflation Dynamics 
VII. Interest Rates and Wages 
VIII. The Hierarchy of Demand 
IX. Conclusion 

前回シリーズ5では、 III. The Source of the Price Level の最後のところが宿題になった感じワンね。意味が取りにくい。

ここはわかってしまえば別にむつかしくないのですが、ここ、ほとんどの人が意味を取りそこなうと思います。
今までの先入観から自由になって素直に解釈することがまずできないからです。

nyun が時々強調するように、一種の「だまし絵」みたいな構造があるということかな

普通に翻訳してみます

Therefore, in general, an economy experiencing a continuous increase in prices requires a continuous nominal increase in what is casually called ‘the money supply’ that constitutes the economy’s net savings of financial assets.
「したがって、一般に、物の価格が上昇する経済では、金融資産の純貯蓄を構成する『貨幣供給』という名目量の増加を継続的に行うことが必須となる。」

Without this increase, real savings desires cannot be achieved, as then evidenced by unemployment and excess capacity in general.
「そうでなければ貯蓄欲を満たすことができず、それは一般に失業と過剰なキャパシティとして現れる。」

This, in fact, is my narrative for the 1979 recession. Fiscal balance tightened as tax liabilities increased faster than government spending, and the real public debt growth further decelerated due to the increases in the price level, with the combination driving the economy into a severe recession. 
「私に言わせればこれが1979年の不況の物語だ。政府支出を増やすよりも早く税債務を増やすという形で財政バランスが引き締められた。同時に物価水準の上昇によって、実質でみた公共の債務の増加はいっそう減速しており、この組み合わせが経済を深刻な不況に導いたのだ。」

あと、この恒等式に準じて話が進んでいたのでした。

財政支出額 ≡ 納税額 + 純貯蓄額

財政支出額 ≡ 納税額 + 純貯蓄額

かるちゃんのイメージ

ここで言われていることは、「物価」にせよ「お金」にせよ、ふだんマスコミやテレビやSNSで言っていることとは言葉の使い方がまるで違うんですよね。
それとは別の言語体系で経済を把握している。
だからちょっとむつかしい。

「一般に、物の価格が上昇する経済」は物価水準の円環が膨張するイメージ

膨張させるためには政府支出を注入し続けないといけない。風船を膨らませる感じ。

公務員への給与、政府調達物品、公共工事などのルートから膨らませる。

納税額は物価水準の円環が膨張するのと連動して膨らむ。
風船からボコッと飛び出たコブのイメージ

貯蓄額も物価水準と連動して膨張する

消費税とか所得税のような税体系だとそうなるわけですよね。

恒等式で使われている記号≡は同値という意味ですか。
「政府支出を増やすよりも早く債務を増やすという形で財政バランスが引き締められた」
というところは、
財政支出額 ≡ 納税額 + 純貯蓄額
で左辺を増やしていないのに右辺の納税額を増やしたために失業を生じた。

≡は=でもいいのです。恒等であるという感じで

民間の純金融資産は財政支出と税の差額であるということの別表現といえます。左辺を増やさないと純貯蓄が saving desire を満たすことができないという感じです。

ひとつ反省しています。

tax liabilities を「納税額」と訳しましたが、これは微妙に違うところがあって、たとえば買い物でお店に消費税を支払ってもまだ納税はなされていませんが、tax liabilities (税債務)は確定していたりするわけです。

かといって「税債務」と訳すと、すでに納税した分が除外されてしまう。。。
だから訳語は「税の負担」がいいんじゃないか。

tax liabilities という言葉は、この money story の冒頭で提示されています。

”The MMT money story begins with the imposition of coercive tax liabilities to create a notional demand for that currency.

これは、財政支出より前の、財政支出を受け取らせるための設定なのだから当然まだ納税はなされていない。だから「納税額」とは違いますね。
ぜんぶ「税負担」で通しましょう。

こう?
財政支出額 ≡ 税負担額 + 純貯蓄額

これは、たとえば兵士が給料をもらっても、そのうち5%は所得税とかの負担分で残りが saving だよなと考える、というように理解できるワンね

なるほどです。

純貯蓄額というのにずっと引っかかってたんですけど、これはその社会全体で考えないといけないのですよね。

例えば給料のうち生活のために消費しますが、

その消費はどこかの売上となって誰かの給与になったり支払いに充てられたり

あるいは内部留保になったり

社会の中で巡り巡って最後には誰かの懐に落ち着く

社会全体で見れば、民間部門に留まっている全体的な貨幣の量ということですよね。

貯蓄と言われると私はなんとなく銀行に預けてる貯蓄を連想してましたが、これは社会全体で考えた貨幣の量なのですよね。合ってるかしらん。

セイビングデザイアというのも社会全体の望まれている貯蓄額ということですよね。

そうですね。
最初に国が税負担を課すと、社会全体に通貨セイビングデザイアが生まれます。

そうすると、税負担は政府がデザインした短期的に政府が民間から回収するもの。セイビングデザイアはおなじく政府がデザインした長期的に民間から回収するもの(学費など)あるいは政府がデザインした消費モデル(持ち家、老後の生活費)に規定されたものという感じがしてきました。

そうですねー
マネーはぜんぶ将来の潜在的な税負担なわけですが、すぐに回収される分と、長期的に民間に滞留する分ががある

回収というか、消滅させられる分、ですか

消滅ですね。再利用されるわけではないですものね。

さらに最近では政府が投資という新たなセイビングデザイアを押し付けてきています。

経済学の方ではこれを「貨幣愛」とか「流動性選好」という言葉を使ったりして、あたかも政府とは独立のもの、人間の自然な欲望であるように扱うのですが、それ政府が作っているでしょ、というわけです。

だから経済学者とはぜったいにかみ合わないんですよ。ここは大事なところです。

経済学は追い立てられて柵に入れられた羊を『柵に入りたがったのだ』『この羊は自分でこの柵を選んだのだ』というわけですね。実際には柵を建てた者(政府)があり、柵へ追い立てた牧羊犬(政府)がいるのに。

その政府を作ったのは国民でしょう?というわけでしょうが、国民の意思は自然現象ではなく意思なんですよね(笑

その国民の意志も、実際には政府がデザインしている。

さて、この文章では1979年不況について二つの効果のコンビネーションだったと言っているわけですが、今話していたのはその一つ目の方でした。
Fiscal balance tightened as tax liabilities increased faster than government spending, and the real public debt growth further decelerated due to the increases in the price level, with the combination driving the economy into a severe recession. 

もう一つは
the real public debt growth further decelerated due to the increases in the price level 

さあ、ここです

”同時に物価水準の上昇によって、実質でみた公的な債務の増加はいっそう減速しており、この組み合わせが経済を深刻な不況に導いたのだ。”

ここで公的債務というのが初めて出てきて、唐突な印象をうけました。

公的債務の増加が減速するとどうして不況になるのでしょうか。

おっしゃる「公的債務」とは?

政府の債務?

public を政府と解釈なさっているわけですが、、、

これはローマの public bath 。これって「政府の浴場」じゃないですよね

あれれ?そうですね。公衆浴場ですね。

まあ、多くの日本人は public debt=国債残高? と脳内翻訳するでしょうね。それは洗脳の結果です

語源で考えても public はラテン語の populus から来ていて、poeple も同語源ワンね。
大衆、公衆という意味が先。。。

モズラーは  public purpose という言葉をよく使います。一つのキーワードですね。

ということで、これはどういうことなのかを捉えなおしてみてください

the real public debt growth further decelerated due to the increases in the price level

むつかしい・・・

公衆の債務?

民間の債務?

この難しさは、モズラーの物語 (narrative) は、いままで私たちが聞かされてきた物語 (narrative) とだいぶ違うという点にあります。
わかってしまえば実に簡単なんですが。

まずは、これまで聞かされてきた物語の方を復習しましょうか。

中学が高校で、中央銀行の政策と「景気」の関係をやったと思うんですよね。思い出せますか?

景気が加熱したら金利を上げて、景気が悪くなったら金利を下げる?

金利を動かすとどのようにして景気につながるという話でしたっけ?

えっと、金利を上げると企業や個人が資金調達しにくくなるから、借金する量が減って、

借金が減るということはそれだけ人を雇ったり設備投資する量も減って、景気の過熱を抑えられる?

金利を下げるとその逆が起きるってならったような。

あと物価はどうでしたっけ?

物価もそれでコントロールOKみたいに習った記憶が・・・(うろ覚え)

このへんですね

物価も金利でコントロールできるみたいに書いてますね。

MMTの物価水準観からしても、政府(日銀を加えた統合政府)が金利を変えると物価水準はもちろん変わります。
政府が「何かをする」わけですから。

それと、モズラーによればローン(銀行の貸出)も商品なわけだったから、ローンという商品の価格をダイレクトに変えているワンね。

そうですね。
そのへんの話はこの文書の後半に詳述されるのでお楽しみに

ここでは、日銀の narrative を読み取りましょう。

それは
「日銀が金利を下げる→貸出が増える→景気が良くなる→物価が上がる」
という形をしています。

本当はそうじゃないんですよね。そう言うお約束になっているけれど。

「まあそういうこともあるかもしれないけれど、それだけじゃないし、メインではないでしょう?」というのが一部の反主流経済学からの異議申し立てではあるわけですが、モズラーは貸出と物価についてさらにぐっと踏み込むというか、まったく別の narrative を語っているわけです。

”物価が上昇すれば、名目的な貯蓄欲もそれに応じて上昇する。同様に、事業の流動性ニーズや在庫、債権の資金ニーズも物価の上昇に伴って上昇する”

ここのところがヒントかな???

実際には物価が上がると、

もっと借りたい、借りなくちゃってなるけど

「物価が上がる」というのがすでに主流の narrative 。ここまでそういう話ではなかったですよね。

Σ(゚д゚lll)ガーン

こういう話をしていたわけです

「名目的な貯蓄欲」名目がヒントですね。

名目と実質の順番ですね

なんでもいいのですが、兵士の給料(労働力の価格)を二倍にする。

あと、学校の授業料をぐっと増やせばCPIに含まれる教育費はぐっと増えますよね。

逆もしかり

この物価の変化、他の変動要因はもちろんあるのですが、メイン中のメインが政府による価格設定で、政府が直接関与しない商品の価格もこれを基準にただちに調整されるわけです。

第四回の牡蠣の話を思い出してもいいかも。
牡蠣の価格は、他の全商品とのバランスによって調整されるのでした。

public debt がなんなのか分からなくて・・・。民間の債務?

そもそも debt は民間にしかないわけですよ

民間債務の増加は景気が良いということだから

名目がヒントでしたよね。

物価水準が上がると名目で民間債務が増加していても実質ではそれほど伸びないから、景気が悪くなる?

そういう narrative もありますが。。。

えっと、奨学金で大学を卒業して、返済が残っているような人を考えます。家のローンがある人でもOK。

はい

物価が上がると real debtが増えます。

負債を抱えている人はそれをいっそう圧縮する方向に行動しがちになります。

これは、物価の上昇は借入(=貸出)を抑制する効果があるということなんですが、そりゃそうですよね。

今、負債を抱えていて、物価が上がっているなら、早く負債を返しておきたいです。

あと将来の物価が上がることがわかっているならば、それは負債が増えるのと同じ意味になる。名目上の負債を持たない人も、借金するよりは貯金しようとしますよね。

う~ん。逆に、これから物価が上がると分かっていたら、今のうちに買っておこうってなりませんか??

では saving desire が高まるのはどちらですか?
A:老後の生活費やお子さんの将来の学費が上がる
B:老後の生活費やお子さんの将来の学費が下がる 

(これはとても重要なやりとり)

あー

通じたようです\(^o^)/
たしかに「今のうちに買っておこう」という心理や行動はありますよね。消費税増税の時の「駆け込み需要」とか。
けどそれは話の全部じゃないくて、消費税はずっとのしかかるのだから、増税を理由に借金してまで何かを買う人はむしろほとんどいないと思います。

いや、両方の人がいるわけですね。

まだ気になることが…

教育費がまさにそうなんですけど、貯蓄で賄えればいいんですが、貯蓄でも足りないとなると奨学金、借金するしかなくないですか。

あるいはあきらめる

そうですね

いよいよ大事なところです。
モズラーの分析のいちばんエレガントで本質的な議論だと思っているところなんですが
people who already have money”と、”そうでない人”は対照的な関係にあると。
この文書でも those who already have money という言い方があとで出てきます

これ↓は、those who already have money な人はできるけれど、そうでない人はできない。 



かるかろどん
う~ん。逆に、これから物価が上がると分かっていたら、今のうちに買っておこうってなりませんか??

たしかに

で、”people who already have money”はお金の借り手でなく貸し手ですから、そうでない人たちが苦しむ金利負担がない。
それだけではなく、金利を得るのですね。
このことが際限ない格差拡大のドライビングフォースになっているというわけ。

富は持たざる者から持てる者へ

さらに!

商品一般の図に金融商品を入れました。「貸出」がそうでしたしデリバティブを入れました。これなんです。 

貸出という商品を買うことができるのは”people who already have money”だけですが、彼らはデリバティブも買うことができる。

これは将来の値動きのリスクヘッジができるということなんです。何かの値段が上がっても下がっても安全だよという。

その金融デリバティブの元手になっているのが国債であり、国債利息です。
だから国債は廃止しろ!ということになるわけ。

国債が諸悪の根源!悪の栄養になっていたとは。

水は高きより低きに流れという自然の摂理に逆らって悪が成り立つには動力源が必要な訳で、その役割を果たしているのが国債なんですね

真の動力源は資本の自己増殖という他ないと思いますが、現代では国債はそのメインツールになっているとはいえるでしょうねえ

えっと
the real public debt growth further decelerated due to the increases in the price level
この話でした

このモズラーの narrative は、普通に聞いてきたそれとはまったく違っているという話でした。

「物価の上昇により、実質民間債務の膨張はますます抑制されていた」、その結果の「不況」だったのだと

普通の narrative は、「不況だから貸出が少ない、だから金利を下げて(インフレ期待を醸成して)…」という形。

つまり「不況→貸出減」という形なのだけど、モズラーのは「価格上昇→民間債務減→不況」という順番になっているワンね。

なるほど

まったく違う視点からものを見ることを教えてもらいました。続きが楽しみです。

この節の最後のところをまとめておきます

Therefore, in general, an economy experiencing a continuous increase in prices requires a continuous nominal increase in what is casually called ‘the money supply’ that constitutes the economy’s net savings of financial assets.
「したがって、一般に、物の価格が上昇する経済では、金融資産の純貯蓄を構成する『貨幣供給』という名目量の増加を継続的に行うことが必須となる。」

Without this increase, real savings desires cannot be achieved, as then evidenced by unemployment and excess capacity in general.
「そうでなければ貯蓄欲を満たすことができず、それは一般に失業と過剰なキャパシティとして現れる。」

ここは、中学生くらいでも理解できるすごくあたりまえのことを言っています。政府が価格を上昇させるならば、通貨(=純貯蓄)の量を増やさないと人々は困る。もしそうしないなら、失業の増加になる。
ここで「過剰なキャパシティ」とは失業と同じ意味ですね。売りにでいている労働力。

なるほど

過剰なキャパシティってそういう意味だったのですね。

この文書を頭から素直に読めばそういう意味で解釈しない方が不自然です。
まず政府が人々に税を課して、政府に雇われない人たちは、商品かサービスを売りに出す。サービスとは労働力のことですよね。

名目物価水準の上昇は税の上昇と同じ働きをしますから、労働力を売らなければならない人はいっそう増える。

This, in fact, is my narrative for the 1979 recession. Fiscal balance tightened as tax liabilities increased faster than government spending, and the real public debt growth further decelerated due to the increases in the price level, with the combination driving the economy into a severe recession.
「私に言わせればこれが1979年の不況の物語だ。政府支出を増やすよりも早く税債務を増やすという形で財政バランスが引き締められた。同時に物価水準の上昇によって、実質でみた公共の債務の増加はいっそう減速しており、この組み合わせが経済を深刻な不況に導いたのだ。」

そっか、公共の債務の増加いうより「民衆の負債の増加」がいいですかね

そうですね。どうしても公共というと国の、というイメージがあります。

そもそも政府は民衆のものと当たり前に考えるわけです。少なくともアメリカの人の建前としては。

確かにリンカーンも「人民の人民による人民のための政治」と言っていたし

さてここまで疑問というか、ひっかかるところはありますか?

よく生産力って言いますけど、このキャパシティって生産力のことかと思っていました。

労働力って生産力とも言えますよね。
なのについつい企業目線で考えてしまう

うまくいえないけど、工場とかの機械とかも含めて生産力?なのかな、と思ってました。

英語を読むときに翻訳語のイメージを引きずってしまう、ともいえるかな

モズラーはよく「税が失業を作る」みたいに言っているわけでが、これは、税がキャパシティを作りそれによって公共の仕事を生み出す、みたいな感覚。

キャパシティ≒貨幣需要
みたいな感じですか

貨幣を需要するとは商品か労働を売らなければならないということですから、税が生むキャパシティとはその労働でできるはずのことということになりますね。

なるほど

ここまでのところの疑問は解決しました

そういえば capasity と capital は同語源ですねえ

cap:頭でしたっけ

capとか catch、captureと同語源でした。公共のための頭数が確保される、という感じでも悪くないと思います。

なるほど

自分はモズラーをけっこう読んだ後にマルクスを読み始めたという順番だったのですが、似ているんですよねー
言葉をちゃんとつかって経済学を根本的に批判するところも

そうなんですね

失業の見方も、主流とはまるで反対方向から「も」把握しているのが分かると思います。
失業者というと「かつて働いていたけれど何かの事情でそれができなくなっている人」というのが主流の narrative だけれども、失業者とはそういう人だけでなく、そもそも政府の設定によってサービスを売りに出ざるを得なくのが失業(unemplyment)じゃん、と。

“女性が輝く社会”は女性も働かざるを得ない社会でした。

一般的には、政府からの徴税、学費などの締付けが無ければ、よろこんで家庭に専念したい人は多いのではと思います。本来家庭を切り盛りすることに能力を発揮するのは誇らしいことですから。

「税が失業を作る」という原則は、quantitative, 量的な議論であるとまずは考えてみるわけです。

なるほど。
そもそも貨幣を得たいという需要を作り出しているのが政府でした。

こういうイメージで考えて…

税が多いほど合計のところの需要が増えるわけです

量的な話なわけですね

かるちゃんは、qualitative にはどんな仕事をしたいとかありますか? 現存している仕事でもそうでない仕事でも

近所の小さい子供を育てている人のお手伝いをしたいです。フードバンクの手伝いも。お年寄りの送迎とか。利潤を生まない仕事がしたいです。

政府はそういう仕事を用意する能力がありますね

ミッチェルは,マルクスの『剰余価値学説史』(Theories of Surplus value)の特にボリュームⅡ(第二巻)で,有効需要だとかいう話を書いている,と言ってました

unemploymentに対してvoluntary unemployment(自発的失業)とinvoluntary unemployment(非自発的失業)とに分けたケインズ

それと対照の、「自発的雇用」「非自発的雇用」みたいな視点があるのはマルクスとMMTだけだと思うんだよね。

なるほど

モズラーはこれを saving desire として扱うわけだけど、主流の発想とは真逆なんだよね。これだと両方が把握される。

税や社会保険料や老後の費用や学費がかかることになっているから saving desire が大きくなって、失業者ではないひとたちが失業者になって雇用市場に現れる

ゲーテが光のスペクトルの残り半分を発見したのとまるで同じだ

剰余価値学説史は色彩論の「歴史編」にあたるって感じだ

ケインズのあれのどこが「一般理論」なのかっていう。 ロビンソンもそこがわからないから同じに見えた。

それって量子力学を理解する前に「古典力学もおなじ!」と言っているようなものなのよ

剰余価値学説史も色彩論「歴史編」も,未だ読めず

ケインズの『貨幣論』と『雇用,利子および貨幣の一般理論』とでは,レイがたしか,前者は内生的貨幣だが,後者では外生的貨幣と内生的貨幣が混ざっている,ということを言っていたような

youtube.com
Aula 2 | Endogenous Money | Prof L. Randall Wray


ここの概要欄に添付されているファイルからの引用です

KEYNES’S APPROACH TO MONEY
• TOM: “Quantity theorist”; Endog M
• GT: Endog M and Exog M
• Two approaches to money adopted in the GT: -Supply and Demand approach of Ch13,15; Exog M? -Liquidity Pref approach of Ch 17 Expected total yield = q-c+l+a

TOM:Treatise on Money, 貨幣論
GT:General Theory, 一般理論
M:Money

「要するに,人間の解剖は猿の解剖にたいするひとつの鍵である。これに反して,低級な種類の動物にある,より高級な動物への暗示が理解されうるのは,この高級なものそのものがすでに知られているばあいだけである」(マルクス『経済学批判』岩波文庫,邦訳320ページ)

とにかく需要と供給とか、そんな単純なはなしではないですよね

どこの業界もそうなんでしょうけど、人手不足だし、でも私みたいに子供の都合で急に休んだりする労働者はパートでないと働けない。出張や日曜日出勤もできない。

安倍首相が国会でこう言っていたそうです。

「ご指摘の実質賃金の減少についてでありますが、景気が回復し、そして雇用が増加する過程において、パートで働く人が増えれば、一人当たりの平均賃金が低く出ることになるわけであります。私と妻、妻は働いていなかったけど、景気が上向いてきたから働こうかということで働き始めたら、(月収で)私が50万円、妻が25万円であったとしたら、75万円に増えるわけでございますが、2人で働いているわけですから、2で割って平均は下がるわけです」
(https://www.huffingtonpost.jp/2016/01/08/abe-part_n_8942104.html)


景気が上向いたから働こうか、なんて一体どこの世界の話なのか。

こういう narrative が流通している

「労働者と貧しい人々の所得が,豊かな人々の所得増加の「おこぼれ」の結果として増加するような政策に代って,貧しい人々の所得が直接に維持され増加し,豊かな人々が偶然の結果として生み出されるような新しい政策が採用されるべきである」(ミンスキー『ケインズ理論とは何か』岩波オンデマンドブックス,邦訳263ページ)

ほうほう、ミンスキーはケインズのどれからこれを読み取ったのだろうね

ケインズ理論とは何か、はミンスキー曰く,一般理論に考察の対象を集中する,とのことです
ただし…

「『一般理論』の本質的な内容を明らかにするためには,『一般理論』の論理構造,内容,そして含意を明示する計画のもとに書かれた『一般理論』後のケインズの論文に多くの注意が向けられるべきである」(ミンスキー『ケインズ理論とは何か』岩波オンデマンドブックス,邦訳21ページ)

あれだねえ、
「オリジナルの議論」を、どこまで「一貫したもの」と把握できるのかを考え抜く』(石倉雅男先生)

ミンスキーはこれをやっていたわけだ。


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